患者になって気付いたMRの課題第14回 MRが成すべきこと
12年12月末、医師から「急性リンパ性白血病(ALL)」と告げられて、私の人生観は大きく変わりました。
これまで綴ったように、生きていることへの感謝の念とともに、絶後の闘病生活を経験し、私のなかの医療観もまるで異なっています。
MR、調剤薬局薬剤師、CSO社長......。経営者そして一医療人として、どう考え方が変わったか、そして進む道について、最後に話をしたいと思います。
まず、組織のなかでの仕事の進め方、経営者・管理者としてのあり方です。
入院当初は会社のことが気になり、頻繁にウェブ会議に参加したり、化学療法の合間に会社に顔を出したりしては檄を飛ばしていました。
マネジメントする立場の人間としてあまりに未熟でした。
今、発病から1年9ヶ月にわたる休職期間を経てはっきりと言えるのは、「やれ」と言っては成果だけを求めている間はダメだということです。
社員一人ひとりが何をすべきかを考え、行動すること。
そして、上に立つものは「信じて、任せて、やらせてみる」ことが大切なのです。
仕事は1人ではできません。
1人のスーパースターがスタンドプレーを繰り広げる会社よりも、仮に凡人ばかりだったとしても、皆で目標を共有し、互いの弱いところを補い合いながら一丸となって取り組める会社のほうが間違いなく強いだろうと思っています。
そして、もうひとつ明確に描けるようになったのが「MRの役割」です。
実は、私自身がこれほどまでに薬に助けられるとは考えてもいませんでした。
それだけに、これまで薬剤情報を扱う側にいた人間として、反省すべき点がたくさんあります。
まず、臨床検査値を知らぬままでは、副作用の話も効果の話もできないということです。
医師や薬剤師と突っ込んだ話をするのであれば、MRが知るべき分野なのです。
そして、薬剤情報はMRが自社の薬を少しでも多く使ってもらうためにあるのではなく、やはり「薬のエンドユーザーである患者さんのためにあるのだ」ということ。
これらを身に染みて感じることができたのです。
私が治療を受けた病院の血液内科の医師は皆自信を持って治療に当たっていましたが、なかには恐る恐る抗がん剤治療をしている施設、医師もいると一緒に治療を受けていた患者仲間から聞きました。
であるならMRこそが、専門性の高い経験豊富な医師たちが確立したエビデンスに基づく治療法や、具体的な症例ベースのディテーリングをもってほかの病院、ほかの医師に医薬情報を伝達することが重要です。
そうしたMRは医師から歓迎され、結果的に処方にも結びつきます。
何より医療の質の底上げに貢献でき、患者さんの利益に通じます。
「あの先生、いつも機嫌悪いし、行きたくないな」という場面でも、「何のための、誰のための適正な薬剤情報か」を考えれば、その薬の恩恵が受けられるだろう患者さんが一刻も早く、1人でも多く届けるために、1軒でも多く回ろうと思えるのではないでしょうか。
「知識・スキルの量と成績・売上げは正の関係にある」と言われますが、優秀なMRは圧倒的な知識量を誇ります。
スキルがないなら知識を増やすしかありません。
豊富な知識を武器として、医師が必要とする薬剤情報をタイミングよく提供する、本当の意味でのMRを育成していくことがCSOの使命です。
アプシェは1月にACメディカルと統合します。
しかし、仕事は変わりません。
社員とともに医療への貢献に邁進します。(完)
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