患者になって気付いたMRの課題第13回 感謝の念で過ごす
13年12月13日。私が退院した日です。
本号がお手元に届く10月15日では1年10ヵ月となります。
社会復帰を果たして、日々社長業に邁進しています。
食事も普通にしますし、お酒も飲みます。
この病になる前は朝から晩まで働きましたし、暴飲暴食も日常的でした。
さすがに今は生活習慣は改善されました(笑)。
前回10月1日号でも書きましたが、退院後も決して順調ではありませんでした。
この連載を始めようとした14年末には白血病の再発が疑われました。
幸い大事には至りませんでしたが、話は一時棚上げになりました。
この春には水疱瘡を患いました。
子どもの頃のことだから覚えていないという人も多いでしょうが、発疹はとても痛いものです。
免疫力が低くなっているので、気を付けてはいたのですが......。
「私は生かされている」と実感し、私は日々感謝の念とともに過ごしています。
急性リンパ性白血病が発覚したときの母と妻の顔は忘れませんし、入院中に精神的にも参ってしまった私を支えてくれました。
今のこの状態を受け入れるのは、近くにいるからこそ並大抵の精神力では持たないと思います。
「ありがとう」と伝えたいです。
子どもたちには本当に申し訳ない気持ちです。
多感で学業でも大切な時期に、非常に厳しい病気を患い、心配をかけてしまった。
しかし、子どもだろうと思っていたら、あっと言う間に成長をしていたんですね。
かなり落ち込んでいたと聞きますが、そんなそぶりを私の前で少しも見せませんでした。
友人もかけがえのない存在でした。
クリーンルームに一人でいるときには、白血病の本を山ほど読みました。
見てはため息をついていましたが、そんな私の心を解きほぐしてくれたのが、友人たちです。
結局は談話室で馬鹿話ばかりをして看護師さんに呆れられたこともあります。
「昌原、さびしいだろう」と言いながら、意味不明な見舞いの品を持ってきてからかう友人もいました。
でも、どん底の私を何度も救ってくれました。
「皆ありがとう」。
献身的に治療を行っていただいた医師、看護師、薬剤師の皆様には本当にお世話になりました。
患者になって、日本の医療は何てすばらしいのだろうかと改めて感じました。
私は決して「優秀」な患者ではありませんでした。
ベッドにはいないし、軽口を叩くし......。
真摯に私と向き合っていただいたことに感謝します。
そして、すみませんでした。
最後に会社の仲間です。
突然の病で驚かれたと思いますが、一所懸命に会社を支えてくれました。
不安だったと思います。
しかし、よく乗り切ってくれました。
私が社長をしているのも、あなたたちがいるからです。
私は薬学部を卒業後、外資系製薬企業のMR(医薬情報担当者)を4年、調剤薬局の薬剤師を6年経験し、今の会社の前身とも言うべき企業に就職し、その後も一貫して医薬品情報を扱う仕事を生業としてきました。
現在はCSO(医薬品販売業務受託機関)の社長として、医師や薬剤師の皆様のお手伝いをさせていただいています。
医療業界で仕事をする以上、国民医療への貢献が第一義だと叩き込まれてきましたが、本当にそれが遂行できているのかこれまで自信が持てませんでした。
しかし、今回の闘病経験が、仕事に対する向きあい方、MRのあり方について見つめ直すいい機会となりました。
そして、おぼろげながらその答えが見えてきたように感じています。
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